極上御曹司に求愛されています


「すごい決断でしたね」
「でも、その決断のおかげで今こうして好きなドレスを作ってるし、店も構えて両親を安心させることもできたし。結果オーライってことよ。さ、木島さんが芹花さんにドレスを着せたくてうずうずしてるようだから、そろそろ選んでもらおうかな。こっちに用意してるから来てもらえる?」

ハッと隣を見れば、悠生が待ちくたびれたように眉を寄せていた。

「桐原さんのプロフィールなら、俺が後で教えてやるから、早くドレスを選ばせてくれ。披露宴会場で一番キレイな女にしてやる」
「キレイな女って、それは花嫁さんだから。それに、選ばせてくれって言われても、あの、やっぱり桐原さんのドレスは贅沢すぎるので、残念だけどいいです」
 
どうしても芹花にドレスを買おうとする悠生に、芹花は遠慮がちにそう言って断った。
だからといって悠生がすぐに引き下がるわけもない。

「残念だと口にするほど気に入ってるんだろ? 俺も桐原さんのドレスを気に入ってるんだ。それに、ドレスの一着や二着買ったって、俺の預金に大した影響があるわけもない」
 
余裕の口ぶりで言い放った。

「桐原さんが言ったとおり、ドレスに合わせて靴もバッグもアクセサリーも俺が選んでやるから、いい加減、諦めろ」
「諦めろって、言われても。そんな」
 
これまでになく強い口調で迫る悠生に、芹花は口ごもった。
預金に影響がないだなんてさすが御曹司だ。
自分とは生まれも育ちも考え方も違うんだなと改めて思う。

「ほらほら、木島さんの気が変わらないうちに一着でも二着でも気に入ったドレスを買ってもらいましょう」
 
芹花の背中を押しながら、恵奈は店の奥へと進んでいく。
その後を追う悠生は「気が変わるくらいなら、連れて来ないだろ」とぽつりと呟いた。