極上御曹司に求愛されています


どうして目の前に桐原恵奈が立っているのか、そして彼女の店でどうしてドレスを選ぶことになったのかわからず戸惑うが、いざ彼女のドレスを間近で見た芹花はこのまま帰る気にはなれない。

「桐原恵奈です。木島さんから披露宴で着るドレスって聞いているけど色や形とか、希望はあるかしら?」
 
恵奈は芹花のスタイルを確認しながら、問いかけた。
突然この場に連れて来られ、とくになにも考えていなかったせいで口ごもる芹花に代わり、何故か悠生が口を開いた。

「手足が長いから、ハイウェストのノースリーブ。ミモレ丈で適度なフレア」
「え、ノースリーブはちょっと……」

ポンポンとドレスの好みを口にする悠生に、芹花は慌てた。
腕を出すのは慣れていないし自信もない。

「小顔のショートカットだし、腕も太いわけじゃないんだろう? ノースリーが似合いそうだけどな」
 
迷いのない悠生の言葉に、芹花は恥ずかしくなる。

「着慣れないものを着て、大丈夫かな」
 
なにごとにも冒険することなく現状維持を優先している芹花には、服であれ靴であれ、新しいものに挑戦することには二の足を踏んでしまう。
ましてや今回は披露宴で着るドレスを選ぶのだ、慎重になるのは当然だ。

「今から体のサイズをいただいて作るのは時間的に無理なの。だから既製品の中から選んでもらうことになるけどいいのかしら?」
 
申し訳なさそうな恵奈に、芹花は慌てて首を横に振った。

「そんな、既製品で十分です。というか……あの、既製品ですら買えるかどうかわからないんですけど」
 
芹花の声が小さくなる。店内のドレスに値札はついていないが、以前雑誌で見た時には安いドレスでも一着十万円。

「もちろん、どのドレスも素敵で着てみたいんですけど」