「芹花にははっきりとした色よりも淡い色がいいな」
悠生は店内を見回し、芹花の手を取って店の奥へと歩き出した。
その時、芹花の背後から、「木島さん、披露宴のドレスならこっちよ」という女性の声が聞こえた。
「電話で雰囲気や身長を聞いて、いくつか用意してみたけど」
芹花が振り向くと、芹花が雑誌やHPで見たことがある桐原恵奈が立っていた。
赤いニットのロング丈のワンピースと八センチはありそうなハイヒールがよく似合う迫力美人だ。
今年三十五歳だと記憶しているが、二十代だと言っても納得できそうなほど肌もキレイで羨ましい。
黒目がちな大きな瞳と赤い唇は意思の強さを感じさせ、ハイヒールを脱いでも百七十センチはありそうな長身、そして長い手足はまるでモデルのようだった。
「本物の方が、断然素敵……」
思わずそう言った芹花に、恵奈はにっこりと笑った。
「そうでしょう? 写真写りが悪いの、私。だから取材とかあまり好きじゃないのよね」
ふふっと笑う恵奈に、悠生は苦笑する。
「好きじゃないっていうより、大嫌いなんですよね。 それより、早くドレスを見せてほしいんですけど」
「はいはい。木島さんがそれほど急かすなんて珍しいわね。えっと、彼女が電話で言っていた芹花さん?」
「あ、天羽芹花です。あの、今日は突然すみません」

