極上御曹司に求愛されています


「じゃ、行くぞ」
「え? どこに?」

さっさと歩き出した悠生を、芹花は慌てて追いかけた。

「あの、家具なら間に合ってます。それほど広い部屋でもないので素敵な家具があっても買えないんですけど」

芹花はずんずん歩く悠生の背に話しかけるが、悠生がそれに答えることはない。

「木島さん……ってだめなんだっけ。悠生さん、あの、悠生さんの家具を買うんですか?」
 
芹花は悠生の隣に並ぶと、歩みを合わせ、顔を覗き込んだ。
どうしてこんな場所に連れて来られたのか全く分からず、混乱している。
その時、学生らしい集団とすれ違いざまにぶつかり、芹花はよろけた。

「あ、ごめんなさい。わっ」

体制を立て直しながら謝る芹花の肩を悠生が抱き寄せた。
芹花は驚き、悠生を見上げた。

「最近は客層が若くなって活気があるのはいいけど、ぶつかられるとケガするぞ」
 
人混みをよけるように芹花の肩を抱き、悠生は迷うことなく歩いている。
そして、しばらく通りを歩いた悠生が立ちどまったのは、キレイな黄色の三角屋根が特徴的な店だった。
辺りで一番大きな二階建ての店舗は、少しくすんだ水色の外壁がおしゃれでかなり目を引く建物だ。
ガラス窓から中を覗けば、華やかな洋服がたくさん並んでいた。