極上御曹司に求愛されています


その後半時間ほど車を走らせた悠生は、家具店が建ち並ぶ通りの近くのコインパーキングに車を停めた。
悠生に促され車を降りた芹花は、いくつもの家具店や雑貨店が並び、大勢の人が行きかう通りを見ながら眉を寄せた。

「あの、私は家具ではなく服を買いに行こうとしてるんですけど」

隣に立った悠生を見上げ、芹花は心細い声で呟いた。

「ここって昔から家具で有名な通りですよね?」
「ああ。代々続く家具店が多いな。最近は若い世代が頑張っていて客層もかなり変わってるけど」
「あ、雑誌でその記事を見たことがあります」
 
ここは大きな通りを挟んで昔から長く続く家具店が軒を連ね、店頭にも商品が出されていて見て歩くだけでも楽しめる家具通りだ。
国内でも有名な家具職人たちが働き、その質の高さは世界的なレベルだとも言われている。
一時は大量生産できる工業製品に価格競争で負け、閉店を余儀なくされる店も多かったが、本物志向の風潮と若い世代が店を経営するようになり、明るく統一感のある外観が評判を呼んでにぎやかになった。
ここ数年で若者をターゲットにしたショッピングモールやライブハウスが通りの近くに建設されたことも功を奏し、地域一帯が活気を取り戻している。
雑誌やテレビで見たことがあるだけで初めて訪れた芹花は、興味深げに辺りを見回した。