極上御曹司に求愛されています


「どうした? 電話しておけば、ドレスも靴もすぐに用意してくれるけど」
 
怯えるような芹花の表情をチラリと見た悠生は、肩を揺らしながら笑う。
スムーズに走る車は、赤信号で止まることもない。

「あの、外商なんて私には縁がないし、それに私が買えるようなお値段でもなさそうだし」
 
このまま本当に外商に連絡されても困ると慌てた芹花は、早口でそう言った。
 
ひとり暮らしの芹花が用意できるお金は限られているのだ、外商なんてとんでもない。
そもそも、百貨店で探すにしても買えるかどうかはわからない。

「値段のことは気にしなくていい。スマホの弁償の続きで俺が買うから、気に入ったドレスを選べば……というか、俺が選ぶ」
「は? あの、だから、弁償のことは解決していて、気にしなくてもいいんです」
「いや、俺は気にする。それに、芹花が着るドレスは俺が選びたい。実は、連れて行きたい店があるんだ」
「え、どうして木島さんが選ぶんですか? それっておかしいです」
「木島じゃない。名前で呼べって言っただろう? とにかく芹花のドレスは俺が選ぶから任せろ。元カレが心底後悔するくらいのドレスを用意してやる」

運転中の悠生は、視線を前方に向けたままきっぱりとそう言った。
その勢いに気圧され芹花は口を閉じたが、心なしか車のスピードが上がったような気がして、不安になる。
百貨店に行くと言った途端、外商などと口にする悠生が連れて行く店だ、お高い商品がずらりと並ぶような店に違いない。
芹花は預金の残高を頭の中で確認しながら、不安で仕方がなかった。