極上御曹司に求愛されています


「土日は休みなのか?」

慣れた様子で運転する悠生の問いに、芹花は「うーん」と呟いた。

「基本的にはそうですけど、完全に休みじゃないんです。担当している弁護士さんのスケジュール次第で出勤することもあります」
「じゃあ、俺が今日来ても、もしかしたら出勤した後だったかもしれないんだな」
「そうですね。先週の土曜日は新聞社の取材が入っている先生がいて出勤してたし」

世間に名前を知られている弁護士が多く在籍している事務所だけに取材依頼は多く、スケジュール管理もしている事務担当の女性が取材に立ち会うこともあるのだ。

「そうか。本業は事務仕事だから忙しいよな。イラストをずっと描いてるわけじゃないんだな」
「はい。イラストだけでお給料をもらってるわけじゃないんです」

芹花はそう答えながらふふっと笑った。

「とはいっても、美大出身で絵ばかりを描いてきたから仕事を始めた時は何もできなくて周りに迷惑をかけてばかりでしたけど。どうにか続けてます」

法律用語を理解していないどころか事務職としての能力はほぼゼロだった芹花だが、彼女が新しく手掛けたホームページのイラストの評判はかなりのもので、それが小さいながらも自信となり事務所に馴染むことができた。
元来、こつこつと真面目に取り組む性格であり、わからないながらも一生懸命仕事に取り組む彼女が受け入れられるのは、あっという間のことだった。
今では仕事もスムーズにこなせるようになり、ホームページのイラスト以外でも重要な戦力となっている。