それから三年、修への思いはとっくに昇華され未練もなにもない。
綾子が芹花を気にかけ優しさを注いでくれたからだ。
だからこそ、芹花は綾子にこれ以上心配をかけないと決めている。
芹花はベッドから起き上がると、スマホを操作し昨日悠生と二人で撮った写真を見つめた。
楽しそうに笑う写真の中の悠生も格好いいが、実物の方がもっと素敵だったと芹花は頬を緩める。
低めで落ち着きのある声は温かく、耳元で聞けばその艶っぽさに胸が震えた。
気づけば悠生は芹花の体を抱き寄せ、互いの体温を交わせるほどの近い距離にいた。
長く恋愛から遠ざかり、職場の男性以外との付き合いが皆無だった芹花には、それにどう反応するべきなのかよくわからなかった。
けれど、極上の酒が芹花の体を熱くし、見た目麗しい悠生に酔わされたせいか。
「初対面であんなに近くにいても、嫌じゃなかった……」
芹花はスマホに映る悠生の顔を指先でそっと撫でた。
悠生が木島グループの御曹司でマスコミに取り上げられる機会があることは聞いていたが、写真を見るなり綾子が悠生に気づくほど世間に知られているとは思わなかった。
本来なら芹花との接点などなにもないのに、たまたま『月』で出会った、それだけの関係なのに、図々しくも芹花は悠生が自分の恋人だと嘘をついて二人で撮った写真を送ってしまった。

