見た目も素敵な御曹司。
芹花とは生きてきた時間も立場もまるで違う遠い人だ。
肩に残る悠生の手の温かさを思い出すことはあっても、この先二人が触れ合う機会はないに違いない。
芹花の心はズキンと痛んだ。
「写真では、仲がいい恋人同士みたいなんだけどな」
寂し気に写真を見つめていると、画面にメッセージが表示された。
【とっとと恋人の写真を送ってよ。見るまで気になって眠れそうもない】
写真を急かす綾子からのメッセージに、芹花は顔をしかめた。
綾子のことだ、写真を送るまで本当に寝ないつもりだろう。
面倒なことになったなと思いながら、芹花は諦めのため息を吐いた。
もしも芹花に恋人なんていないとなれば、地元の仲間たちからは礼美に恋人を奪われたかわいそうな女だと思われたままだ。
そうなれば、それはすべて礼美と修のせいだと言って披露宴のボイコットを本気で決行するかもしれない。
礼美のウェディングドレスにワインやシャンパンをかけるなんてことをしでかしてもおかしくない。
「仕方がない。とりあえず送らせてもらおう……」

