「うそ……なんてタイミングがいい」
悠生が何気なく口にした言葉を思い出してまごついた芹花に、綾子は尚も押しの強い言葉を続けた。
『じゃあ、芹花が素敵なオトコだと太鼓判を押す恋人の写真をすぐに送ってね。みんなにも見せて礼美の披露宴にはちゃんと出席するように言っておくから』
綾子は自分の思いつきに満足気だ。
そして、何も答えない芹花に構うことなく言葉を続けた。
『でも、一枚だけじゃ疑う子もいるかもしれないから、芹花と恋人の甘い写真を披露宴までに何枚か送ってよ。そうすればみんな納得するはず。さすが私、いい考え』
芹花はスマホを握りしめ、呆然とする。
どうしてこんな展開になってしまったのかわからない。
自分に恋人がいるとはひとことも言ってないし、写真があるとも……。
『じゃ、ラブラブ写真の定期便、待ってるからね。おやすみ』
「あ、あやこーっ。う……切れちゃった」
芹花は通話が終了したスマホを手にしたままがっくりと肩を落とした。
「写真なんて、送れるわけない」
芹花は泣きそうになりながらスマホの画面をタップし、数時間前に悠生と撮った写真を確認する。
「……やっぱり、格好いい」
切れ長の目は優しく笑っていて、弧を描いている薄い唇には色気がある。
ほんの少し茶色がかった瞳はいつまででも見つめていられそうな気がしてドキドキする。
「近すぎるよ、すごく」
ごく自然に芹花の肩を抱き、頬寄せ合う悠生の表情は、まるで何度もそうしているようにも見えるが、それは錯覚だと芹花は自分に言い聞かせた。

