『そうだね、礼美がフレンチの一番お高いコースを用意するから楽しみにしていてねって自慢気に言ってたな。ワインも極上のものを空け放題だそうだし。それをみすみす放棄するのももったいないか……』
「そうだよ、食品会社の跡取り娘だもん、最高の食材を使ったおいしい料理が次々出てくるはず。楽しみだよね。ね」
綾子の言葉を後押しするように、芹花は弾んだ声を上げる。
ここでなんとか説得しなければと必死だ。
『だよねえ。まあ、料理は捨てがたいしせっかく買ったサファイア色のドレスも着なくちゃもったいないしなあ』
「綾子のドレス姿、見てみたい。スタイルがいいから何でも似合って羨ましい。ドレスに合わせて素敵なハイヒールも用意してるんでしょ?」
『まあね。うーん、そうだな、ま、出席しようかな』
スマホ越しに、綾子がそう言って小さく息を吐き出したのを感じ、芹花もホッとした。綾子が出席するとなれば、同級生たちも同じように出席してくれるだろう。
「綾子がサファイア色のドレスなら、私は何色にしようかな。まだ用意してないんだよね」
ようやく出席すると言った綾子の気が変わらないようにと、芹花は早々に話題を変えた。
芹花が披露宴で着る服をまだ用意していなくて多少の焦りを覚えているのは事実なのだ。
『芹花ならピンク系が似合うんじゃない? 目が大きくて色白の人形みたいにかわいいから礼美顔負けのプリンセス風にまとめたら?』
「プリンセスなんて無理無理。黒とか紺の落ち着いた服でいいよ」
綾子の思いつきに、芹花はぶんぶんと首を横に振った。
確かに色白の肌だが、それだけでプリンセスなんてとんでもない話だ。

