極上御曹司に求愛されています


たしかにそうだ。
芹花の地元は自慢できるものなど何もない田舎町だったが、ここ数年で開発が一気にすすんだ。
総合病院も建設される予定で、それに伴い高速道路も開通した。
綾子が言うように、礼美の父親の会社が地元の経済を支えているというのは昔の話なのかもしれないと、芹花は感じた。
ネットも発達し、環境を整えれば自宅でもどこでも仕事を完結できる世の中だ、これまでのように礼美の顔色を窺う必要はないのかもしれない。

『だから、披露宴をボイコットしようがワインをぶっかけようが、なんとかなるのよ。芹花が心配することないから、任せて。なにもかも自分の思い通りにできると思ってる礼美に、ガツンとお灸をすえるいい機会だしね』

相変わらずの極端な綾子の言葉に、芹花は本気で慌てた。

「あの、あのね、いまさら礼美や修くんに仕返しとかしなくていいし。披露宴でどんなおいしい料理を食べられるのか楽しみにしてるんだから、面倒なことはやめようよ。ね?」

芹花は頭を抱えた。
地元の仲間の結束の固さと自分への優しさはありがたいが、だからといって礼美と修の門出を台無しにするわけにはいかない。

『おいしい料理か……』

綾子が思い出したように呟いた。