『なんでって。今回ばかりは身勝手な礼美を許せなくて、披露宴を集団ボイコットしようかって話が出てるの』
「そんなこと、やめてよ。小沢食品で働いてる子もいるし、そんなことしたら仕事辞めさせられるでしょ」
焦る芹花に、綾子は平然と「そうかもね」と答えた。
大したことだと思っていないような口調に、芹花の焦りはさらに大きくなる。
「わかってる? 礼美のお父さんの会社を辞めたらそこには大きな働き口はないんだよ? 家族が働いてる子も多いのに、絶対だめ」
綾子ならその事実をよくわかっているはずなのに、無謀なことをしでかしそうで、芹花は混乱する。
『芹花が心配するのもわかるけど、芹花を悲しませた元凶の礼美の結婚を祝う気持ちなんて毛頭ないし。もし出席しても披露宴会場で芹花が悲しい顔してうつむいてるとこなんか見たら礼美と馬鹿野郎オトコに手元のワインでもぶっかけてやる打ち合わせも完了してるから、楽しみにしてて』
「そんなの楽しみなわけないでしょ。私はもう修くんのことはなんとも思ってないから。披露宴をボイコットしたり邪魔したら、やっかいなことになるのはわかってるはずでしょ」
テーブルに置いたスマホに向かって叫んだ芹花の大きな声が、部屋に響き渡った。
「礼美の家の会社で働いてる子とか、どうするのよ。クビにならないにしても、いづらくなるに決まってる。最悪、無職になったらどうするの」

