「あ、悠生ね、私と久しぶりに会ったっていうのに、挨拶もそこそこに延々と芹花さんのことをのろけ続けてね。はじめは笑って聞いてたんだけど、そのうち怖いくらいに溺愛されて束縛される芹花さんに同情したの。だから、芹花さんのことを私も守ってあげようと思ったから、コメントに〝もう、大丈夫〟って書いたの。なかなかでしょ?」
 
マイクを通して響いた楓の言葉に、会場はどっと沸いた。
悠生の発言から、すでに彼の芹花への強い愛情はわかっていたが、まさかそこまで……と、記者たちは盛り上がる。

「すみません、なんだか色々緊張していたみたいで……」
 
突然泣き出した芹花は、そう言って記者たちに背を向けたが、その姿も微笑ましく、会見の場は一気に和んだ。
悠生や楓と違い、一般人である芹花が大勢の記者の前に立つプレッシャーはかなりのもの。
ただでさえ木島家に嫁ぐことになって大変な思いもしているだろうと、記者の誰もが芹花に温かいまなざしを向けた。
悠生と楓のことをこれ以上詮索する必要はないとばかりに質問の内容は悠生と芹花の結婚のことに集中した。
もちろん、生方の名前が挙がることはなかった。

そして、この会見の模様がワイドショーで何度も流されたことでイラスト集への関心はそれまで以上に高まり、予想以上の売り上げを記録することになった。