極上御曹司に求愛されています


「芹花、披露宴は終わったんだよな?」
「はい、さっき終わりました」
 
悠生は芹花の前に立つと、ドレスを身にまとっている姿を食い入るように見つめた。

「さすが桐原さんのドレスは目立つな。入ってすぐに芹花に気づいたし。だけどもう少し露出は少なめのほうがいいよな……だけど、似合ってるからいいか」
 
悠生は芹花の姿を熱心に見ながらぶつぶつ言っているが、その間にも周囲からカメラを向けられている。
今撮られている写真がSNSにアップされでもしたら、それこそ来週のワイドショーにネタを提供することになる。
早くどこかに移動しなければと、芹花はそっと後ずさった。

「芹花、とりあえずエレベーターに乗ろう」
 
綾子も同じ判断をしたのか、そう言って背後のエレベーターに向かった。

「悠生さん、まずいです。とりあえずここを離れましょう」
 
芹花は悠生の腕を掴むと、急いでエレベーターに向かった。
けれど、悠生はその場を動かず、逆に芹花の体をぐっと引き寄せた。
腕を引っ張られた勢いのまま、芹花は悠生の胸にぱふっと飛び込んでしまった。
その瞬間、何が起こったのかわからない芹花は動きを止めたが、それを見た周囲からの「きゃー」というざわめきが聞こえ、慌てて悠生から離れようともがいた。
けれど、悠生はそれを許さない。

「離して。写真を撮られてるし、まずいですよ。」
「大丈夫だから、じっとしてろ」
 
焦る芹花と違って、悠生は落ち着いた声で芹花に微笑んだ。

「たとえマスコミに写真が送られてもいい。いっそ撮影会を開いてもいいな」
「あ、あの?」
 
悠生の腕の中で、芹花は目を丸くした。
もう手遅れかもしれないが、今マスコミに写真が渡ると、それこそ楓と生方隼人と共に立てた計画が台無しになるかもしれない。
楓があのマンションに出入りしていた理由を探られるかもしれないからだ。