「それに、いつの間にこんなに綺麗になったの? さすが都会で働くと磨かれるんだね。このドレスも高そうだもん」
「あ、ありがとう……」
こうして注目を浴びることに慣れていない芹花は、「ありがとう」と答えながら後ずさった。
「はいはい、芹花のお祝いは、また改めてしようよ。まずは礼美にお祝いを言いに行かなきゃ」
綾子の声に、同級生たちは芹花と話し足りないながらも動き始めた。
「さっき会ったけど、白無垢姿の礼美、なかなかキレイだったよ」
気遣う綾子の声に、同級生たちの心配する視線が芹花に向けられた。
修と芹花のことを知っているのだ、それは当然だろう。
そんな同級生たちの優しさに、芹花は笑顔で応えた。
「地元で一番のお嬢様だもんね。お色直しも四回だったっけ? 楽しみだね」
大丈夫だよ、と言外に含ませた芹花の言葉を聞いて、同級生たちはようやく安心したようだが、それならばと、同級生のひとりが真面目な表情で口を開いた。
「で、木島悠生に二股かけられてるって、本当なのか?」
「ちょっと、お祝いの席で何を言ってるのよ」
綾子が慌てて間に入るが、同級生たちはそれに構わず芹花の答えを待っている。
芹花はどう言えばいいだろうと悩んだ後、申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんね。……今は何も言えないんだ。だけど、二股をかけられてるわけでも、裏切られてるわけでもない。それに、私は今仕事も順調だしすごく幸せだから、安心して」
そう言って胸を張る芹花は、ドレスの輝きに負けないほど、美しかった。

