極上御曹司に求愛されています


「男性陣の目をくぎ付け。素敵なドレスを着せるのも考えものですね……と。木島さん、拗ねて暴れるかもしれないけど、まあいっか。……送信完了」
 
スマホを手にくくっと笑う綾子に嫌な予感がした芹花は、その画面を見て慌てた。

「もしかして、悠生さんに今の写真、送った?」
「うん。送ったよ。いつも芹花の写真を送ってもらってるから、たまにはお礼しておかなきゃね。男性から注目を浴びる、すっごくキレイな芹花の写真だから、心配しなくても大丈夫」
「大丈夫って……」
 
困り顔の芹花も可愛くて、綾子がこの顔も撮って悠生に送ろうかと迷っていると、スマホが震えた。

「あ、木島さんから。はやっ。えーっと。……芹花の側から絶対に離れるなだってさ。これはもう木島グループの次期トップの弱点は芹花に決定。間違いない。……じゃあ、芹花が木島さんに愛されすぎて幸せだと確認できたところで、新婦に会いに行こうか」
 
綾子は冗談交じりの口調から一変、慎重な表情を浮かべた。
芹花が礼美と顔を合わせることを心配しているのだ。

「芹花、久しぶり」
 
その時、同級生たちが二人の周りに集まってきた。
滅多に地元に帰ることのない芹花が有名人として帰ってきたとなれば、誰もが彼女と話したがっている。

「同窓会にも滅多に帰って来ないと思ってたら、あっという間に有名人だな」
「今日、ここに来る前にイラスト集、買ったぞ。まさかあのイラストの作者が芹花だとは驚いた。嫁さんが絶対サインもらって来いってうるさいから、あとで頼むな」
「美大に行ったのは知ってたけど、よく頑張ったね、すごいよ。同級生の誇りだよ」
 
集まった同級生たちから次々と祝いの言葉をかけられ、芹花は照れた。
礼美と修のことがあり、なかなか地元に帰ることはなかったが、こうして集まれば、遠慮していた時間がもったいなかったと感じる。
時間薬とはよく聞くが、まさにこのことだ。