極上御曹司に求愛されています


「あ、記者の人が大勢来てるのはね、イラスト集のオビのコメントが竜崎楓さんだからなんだよね。悠生さんを取り合っているかもしれない二人が実は仲良しだったのかってちょっとした話題になってるから、そのことを聞きたいんじゃないかって出版社の人が言ってた」
「言ってたって……大丈夫なの? 聞かれたらちゃんと答えられるの?」
 
心配する綾子を安心させるように、芹花はこくりと頷き、すっと表情を作った。

「竜崎さんは、同じ女性として尊敬できる、ステキな人です。以前木島さんとお付き合いされていたそうですが、木島さんの女性を見る目は確かだなと思っています」
 
スラスラとそう言った芹花に、綾子は口を開いたまま驚いている。

「え? なにかおかしい? 悠生さんにもOKもらったし、嘘じゃないし」
「いや、おかしくないけど。でも、芹花、強くなったね。いつも人の後ろに隠れて絵ばかり描いてたのに」
「うん。私もそう思う。これも全部悠生さんの影響かな。悠生さんも腹を括ったから、私も覚悟を決めて半年頑張るって決めたの。それに、強くならなきゃ悠生さんの隣にはいられないでしょう? なんせ社長になっちゃいそうだから」
 
そう言って肩を落とす芹花だが、表情は明るく口調もしっかりしている。
悠生が選んだドレスがそんな彼女の魅力をさらに強調していて、ホテルにいる男性たちの視線を集めている。
綾子はふと思いつき、クラッチバックからスマホを取り出した。
そして、芹花に向けて構えた。

「芹花、笑って」
「え? 写真?」
「せっかくだから、そのドレスもしっかりと撮っておかなきゃね」
 
綾子は数歩後ずさり、芹花の全身の写真を撮った。
突然シャッターを切られて驚く芹花の顔もなかなか美しく、ドレスの華やかさに負けていない。
綾子はその写真に満足しニヤリと笑うと、慣れた手つきでスマホを操作し始めた。