極上御曹司に求愛されています


新婦の控室の前には綾子をはじめ地元の友達十人ほどが集まっていた。
芹花と修のことを理由に、大量欠席者が出るかもしれないと心配していたが、和やかな雰囲気で笑い合う同級生たちを見て、芹花はホッとした。
綾子が芹花に気づき、駆け寄ってくる。

「そのドレス、すっごく似合ってる。さすが桐原恵奈の作品だね。というより、木島さんが選んだだけあるって言ったほうがいいのかな」
 
綾子はくくっと笑い、肩を揺らす。

「どっちも正しいかな。ドレスも素敵だし、選んだくれた悠生さんのセンスも抜群だし」
 
そう言ってニッコリ笑った芹花に、綾子は複雑な表情を見せた。

「……芹花、大丈夫なの? 記者たちからしつこく追いかけられてない?」
 
綾子は周囲を気にしながら小声で問いかけた。
週刊誌の記事については、悠生から他言無用だと言われながら詳細を聞いていて、二股などしていないことはわかっているが、今もホテルの外には芹花の姿をとらえようとする記者たちがいるのだ。
いくら木島家が用意した防犯体制が完璧なマンションにいるとしても、芹花がまいっていないか心配で仕方がない。

「この後のサイン会にもかなりの記者が押しかけてきそうだけど、なんなら私たちでガードしてあげるわよ」
「大丈夫。予想以上に記者の人たちがサイン会の会場に詰めかけているみたいだけど、迎えに来てくれるし、なんとかなるわよ。でも、ありがとう」
「迎えって、すごいね。まるで芸能人か政治家みたい」
「そうなの。私も勘違いしそう」
 
ふふっと笑った芹花の様子が落ち着いていて、綾子は安心した。
悠生とちゃんと気持ちを通わせたと聞いているが、そこからくる自信だろうか、今日の芹花は本当に美しい。