極上御曹司に求愛されています


今日の会見はこれで終わりだとばかりに椅子の背に体を預けるが、愼哉が横目でその態度を注意したようで、悠生は慌てて体を起こした。
記者の間に小さな笑いが広がり、その場の雰囲気が優しくなったのが画面越しにも伝わった。

「竜崎さんと違って、私に名声なんてないのに。これじゃ、誉め殺しだ」
 
悠生の言葉に、芹花の胸はいっぱいになった。
あの写真について売名行為だと言われていることも知らなかったが、それに対して悠生があんな思いを口にするとは、想像もしていなかった。
芹花は、自分が感じている以上に悠生に愛されているのだと実感した。

「天羽さんの恋人、いい男だな」
 
三井の深みのある声に、芹花はこくこくと頷いた。

「でも、悠生さんだって、仕事の評判はいいのに」
 
たしかに、自分は単なる御曹司というだけでなんの才能もないと口にし、ピアノの才能がある愼哉に家業を任せることに抵抗を感じているようだったが。

「あ……もしかしたら」
 
芹花はテレビに映る悠生と愼哉に視線を戻した。
ピアニストになる夢を諦めた愼哉に、せめて趣味としてでもピアノを弾く時間を作ってあげたいと言っていた。
おまけに悠生は木島グループを率いることに不安はあっても抵抗はないとも言っていた。
だから、愼哉に代わって、父の跡を継ぐことにしたのかもしれない。
 
『俺も腹をくくるべきだな』
 
昨夜悠生が口にした言葉には、愼哉を木島グループの重責からほんの少し解放し、自分がその先に立つ決意が込められていたのだろうと、芹花は考えた。
きっと、間違いない。

『ですが、木島グループとの縁によって彼女たちが得るものは大きいのではないですか? お二人の女性がそれを求めて悠生さんに近づいたということはないでしょうか』
 
考えを巡らせていた芹花の耳に、相変わらず棘のある記者の声が届く。
悠生は表情を変えることなく落ち着いた声で答えた。