極上御曹司に求愛されています


そこまで話した悠生に、別の記者の手が挙がった。

『その竜崎さんと天羽さんですが、木島悠生さんとの写真をわざと撮らせたのではないかとの話もありますが、そのあたり、いかがですか?』
『……それは、どういう』
 
記者の質問に悠生の表情が強張る。
芹花は、楓が悠生との写真を記者にわざと撮らせたことがばれたのかとドキリとした。

『竜崎さんはすでにモデルとして活躍されていますが、海外に拠点を移す話もありますし、木島グループという世界規模の会社との関係をにおわせることで足場を固めようとして。そして天羽さんもイラスト集の発売が目前ですので、売り上げのための話題作りを狙って。つまり、女性二人の売名行為ではないかという話があるのですが、いかがでしょうか』
 
わざとだろう、記者は意地の悪い声で悠生に問いかけるが、悠生は一瞬眉を寄せたが挑発に乗ることもなく、ただ記者を見つめ返した。

「売名行為って、そんなこと考えたこともないのに」
 
呆然とする芹花に、三井は「名誉棄損で訴えてやるぞ」と悔し気に呟いた。

『売名行為、ですか』
 
悠生も驚いたようにそう言って、隣に座る成市と愼哉に順に視線を向け、苦笑した。

『あの二人には、そこまで面倒なことを考える時間はないと思いますよ。竜崎さんも天羽さんも、私のことなんて二の次で仕事に追われているし、天羽さんは、顔出しするのもプロフィールを公表するのも嫌だとごねて、出版社を困らせていたらしいし、ありえない』
 
悠生の言葉を聞いていた成市が、くくっと笑い頷いている姿がアップで画面に映り、事務所内からも同意する声と笑い声が響いた。
芹花は恥ずかしくなってうつむいた。

『それに……』
 
悠生はなにかを考え込むように間を置くと、ゆっくりとした口調で話し始めた。

『売名行為という話になれば、私のほうがあの二人を利用しているかもしれません。今記者の方がおっしゃったように、竜崎さんのモデルとしての活躍は今更私が述べなくてもご存じのとおり素晴らしいものですし、天羽さんも、絵の才能が世間に認められ自分の才能ひとつでイラスト集を発売することになった。それは、お二人が努力された結果であり、私にはない才能によるものです。
私が来年木島グループを率いる立場に就くのは、決して私の才能や努力だけで決まったことではありません。この家に生まれたことによることが大きい。だからこそ、自分の才能で道を切り開くお二人が、素敵に思えるし、羨ましい。今回の記事が売名行為によるものだとすれば、私の方が、彼女たちの名声を利用していることになります』
 
悠生はそう言い終えたあと、満足げに笑いホッと息をついた。