芹花の情報が公開された後、事務所や出版社にはいくつもの問い合わせや取材申し込みがあった。
その中には悠生との記事が出ることを聞きつけたマスコミからの問い合わせもあり、事務所は慌ただしくなった。
今話題のイラスト集の作者が、木島グループの御曹司と付き合っているのかとネットでも話題になっている。
週刊誌の発売を前にこれだけざわつくのだ、明日その写真が出ればどうなるのかと、芹花は心配でたまらない。

「こんなことになってすみません」
 
芹花は三井を始め、事務所の弁護士や所員たちに頭を下げた。
ただでさえ忙しいのに、面倒なことに巻き込んでしまい、申し訳なくてたまらない。

「いや、いいんだよ。天羽さんより慧太の方がよっぽどマスコミに追われてるし。それも日常的にね」
 
頭を下げる芹花に、三井は明るくそう言って笑った。

「慧太なんて週刊誌から逃げるのを本職にしてるのかというくらい、追っかけられてるし。まあ、弁護士相手に下手な記事を書いて名誉棄損で訴えられないように、実際に記事になるのは少ないけどね。結婚ともなれば大きな記事になると思うよ」
 
なんてことのないように話す三井の笑顔に、芹花は少し落ち着いた。
悠生と並んで独身のイケメン御曹司として有名な慧太のことだ、今芹花が味わっているマスコミへの不安以上の面倒な思いを抱えているのだろう。

「で、その木島の御曹司とは連絡が取れたのか?」
 
笑顔を見せていた三井が、気遣うような声で芹花に尋ねた。

「それが……昨日も連絡がつかなくて、全然話せていないんです」
 
芹花の声が次第に小さくなる。
今朝も何度か電話かけたがつながらず、メッセージが返ってくることもない。
見るからに気落ちしている芹花の姿に、その場にいた三井と甲田が顔を見合わせた。
視線を交わし、何かに納得したように頷くと、甲田が口を開いた。

「実はね、天羽さんにはショックだと思うんだけど」
 
芹花の表情を伺いながら、甲田は手にしていたタブレットを芹花に手渡した。

「何ですか?」
 
仕事のことだろうかと芹花はタブレットを受け取るが、画面を見た途端表情を強張らせた。

「これって……悠生さん? それに、竜崎さん」