極上御曹司に求愛されています


『当然でしょ? お姉ちゃんが事務所のHPのイラストを描いてるって前に教えてくれたから、それも毎月見てるし、HPでイラスト集が発売されるって告知されてるからずっと楽しみにしてたんだ』
「そう……ありがとう」
 
母親の反応が反応だっただけに、芹花は父親にも杏実にもイラスト集のことは伝えていなかったのだ。
なのに予約を入れていると知り、驚いた。

『それに、母さんも父さんも、発売日を楽しみにしてるよ。ちょうど発売日に本屋さんがオープンするから、朝から買いに行くって張り切ってるし』
「うそ……。だって、母さんは、私が何を言っても信じないっていうか、大した仕事なんてしてないだろうって言って、お見合いまで用意してて」
 
杏実の言葉が信じられず、芹花は戸惑った。
イラスト集の話をした時の様子とまるで違う。

『あ、お見合い相手の人、かなりイケメンだよ。なんなら私がしてもいいくらい。母さんなんて、当日お姉ちゃんに着せる服を作ったくらい楽しみにしてるし』
「はあ? 服ってどういうこと? なにも聞いてないけど、あ、そう言えば、当日の服は用意するって言ってたような気がする。てっきり何か買うのかと思ってた」
 
今どき振袖なんて流行らないと言って、洋服は自分が用意するとたしかに言っていた。

「でも、服を作るって、どうして? 今まで作ってもらったことなんてないのに」
『だからだよ。今まで私の発表会の衣装を作るだけで精一杯でお姉ちゃんの服を作る余裕がなくて申し訳なかったって言ってた。本当は礼美さんの披露宴のドレスを作りたかったみたいだけど、買っちゃったんでしょう? だからお見合い用のワンピースにしたって言ってたよ』
 
芹花は、杏実の言葉がにわかには信じられなかった。
経済的な問題で、母親が忙しい合間に杏実のドレスを手作りしていたが、授業料免除となりお金と時間に余裕ができた。
だったらと、これまで何も作ってあげられなかった芹花にお見合い用のワンピースを母は作ったらしい。