「悠生さんの知り合いに代わって二人で行ったんですけど、その時の写真がまさか」
「天羽さんたちの隣のテーブルにいた客が撮った写真がどうしてか週刊誌に流れたみたいだな。今はSNSのおかげでどこまで写真が流れるのかわからないから怖いな。まあ、木島悠生に気づけばとりあえず写真撮っておこうくらいの軽い気持ちだったのかもしれないが」
プライバシーもなにもあったもんじゃないと、三井は呆れた声で呟いた。
PCに映る写真を見た時、芹花は綾子に送った写真が流出したのかと心配したが、そうではなかったとわかりホッとした。
芹花たちのテーブルの近くにいた誰かが撮った写真のようだが、週刊誌にまでどうやって流れたのだろうと怖くなる。
「この写真、週刊誌に載るんですか?」
そうでなければいいと芹花は期待したが、「残念ながら」と言って肩をすくめた三井を見れば期待通りにはいかないようだ。
「あれ、どうしてこの写真が事務所あてに届いたんですか? まだ天羽のプロフィールも顔も公表してませんけど」
橋口の問いに、芹花もそういえばと思う。
芹花の顔やプロフィールが公表された後なら事務所に写真が送られてきても納得できるが、悠生と一緒にいる女性が芹花だと示すものはなにもない。
「ああ、これは木島重工業の広報から届いたんだよ。あさって発売の週刊誌に掲載するからと出版社から連絡があったらしいぞ」
「木島重工業……」
「そうだ。木島グループの本体ともいえる会社だ。悠生君は今は銀行で働いているが、近いうちに重工のほうに移ることになってる。だからそっちに写真が届いたんだろうな」
芹花は悠生が木島グループの中枢に移ることは聞いていたが、すでにその下地は作られつつあるのだと知って驚いた。
「この写真の相手が天羽さんだと悠生君から聞いて、慌てて木島重工の広報が連絡してきたんだ。木島君は天羽さんは恋人だと断言してるらしいし、なんせこっちも大手法律事務所だからな、敵に回したくないんだろう」
「所長、そこは偉そうに胸を張るところじゃないですから」
自慢気な三井に、橋口が呆れて釘を刺した。
けれど、三井の言葉は正しいのだろうと芹花は思う。
悠生を守りたいがために写真に一緒に写っている芹花を適当に扱えば、国内有数の法律事務所を敵に回すことになるかもしれない。
芹花の背景を知れば、慎重にもなるだろう。

