「え、これが天羽? かわいすぎるんだけど、修正してるわけじゃないよな?」
「橋口、それは失礼だぞ。もともと天羽さんはかわいいんだ。だけど、恋人と一緒だとこうも変わるものなんだな」
パソコンの画面を覗き込む橋口と三井が、感心するように何度も同じ言葉を繰り返している。
「修正って、どういうことですか。それに恋人恋人って何度もからかわないでください」
芹花の裏返った声が所長室に響いた。
「かわいいって言って叱られるとは思わないよなあ、橋口」
「ですよねえ。長い付き合いの俺達には絶対に見せないこーんなかわいい顔、恋人には見せるなんて、悔しくてムカつきますよね」
落ち着かない芹花を、三井と橋口はからかうように見つめた。
「でも、これほど男前の御曹司なら、天羽が出会ってすぐにメロメロになるのもわかるけどな」
感心するような橋口を、芹花は小さく睨んだ。
「別に悠生さんが御曹司だから好きになったわけじゃありません」
「はいはい。そんなに照れなくていいから。それよりも、この写真の出所が問題なんだよな」
三井の落ち着いた声に、芹花と橋口はハッとした。
「そうですね……。まさか私が週刊誌のネタにされる日がくるとは思いませんでした」
力なくそう言って、芹花は肩を落とした。
三井に呼ばれた芹花と橋口は、すぐさまパソコン画面に映る写真を見せられた。
それはアマザンホテルのブライダルフェアに出席した時の芹花と悠生の写真だった。
白いクロスがかけられた円卓に並んで座り、親し気に顔を寄せ合う二人の姿は、どう見ても結婚を控えた恋人同士だ。
「テーブルの横を歩く新郎新婦役のモデルを見上げながら、幸せな未来について語り合っているだろう二人。だってさ」
橋口は、写真に添えられた文章をからかうように読み上げた。
「一応確認するが、これは天羽さんで間違いないんだな?」
三井の言葉に芹花はこくりと頷いた。

