「とにかく、今日は帰る。帰って悠生さんに電話して聞いてみる」
芹花はPCの電源を急いで落とし、カバンを手に取った。
そして、慌てる芹花を面白そうに見ていた橋口に「じゃ、また明日」と言ってロッカー室に向かおうとしたが。
「天羽、ちょ、ちょっとこっちに来てくれ。大至急だ」
離れた場所から三井の声が響いた。
芹花が振り返ると、所長室の前に立った三井が焦ったように芹花を手招いている。
芹花と橋口は顔を見合わせ首をかしげた。
「いいから早く来てくれ。そうだ、橋口も一緒に来い」
大きな身振りで二人を呼び寄せる三井はかなり焦っている。
いつもの余裕はまったく見えず、芹花も焦りを覚えた。
「なにか、面倒なことがあったみたいだな」
橋口の低い声に頷き、芹花は三井の元へと急いだ。

