「だから、イラスト集を出してもらったことを区切りにして、黒板メニューは終了することにしたんです。HPの方も、私以外にも絵が得意な人がいるので、三人で交代で描くことになりました」
母親との電話を終えた直後は混乱し涙を流した芹花だが、悠生と話しているうちに冷静になれた。
気持ちを言葉にしていく中で、自分の決心は間違いではなかったと確認できた。
「そう。黒板メニューは残念だけど、仕方がないな。宅建の資格を取れるくらいだから、今の仕事を突き詰めれば絵以外の才能を見つけられるかもしれないな」
「それは大げさですけど、頑張ります」
前向きな気持ちでそう言った芹花は、悠生の顔を見上げ、照れくさそうに笑った。
絵を描かなければ自分には何も残らないという強迫観念もあって資格を取り、その勢いで事務仕事に集中することにしたが、決めたあとも迷いが完全に消えたわけではなかった。
けれど、悠生は新しい道を進もうとしている芹花を認め、背中を押してくれた。
「なんだか、力が抜けたような気がする」
ふうっと息を吐き悠生に身を委ねた芹花を、悠生はくくっと笑った。
「そうだな、重くなった」

