それは、悠生と楓が付き合っていたということだろうか。
芹花は美男美女の二人が並べばそれこそ最強だなと想像し、同時に自分では悠生と並んでも様にならないとも思った。
そして、悠生が言っていた古い知り合いとはそういうことだったのかと納得する。楓と再会した時、緊張し不自然な笑顔を浮かべていたのはそういうことだったのだ。
昔愛した女性との再会に、ときめいたのだろうか。
ということは、あの日写真を撮ってすぐに芹花にキスをしたのも楓との再会が影響したのかもしれない。
ざわめく心を落ち着かせるために、たまたま近くにいた芹花にキスをした。
そう考えればすべてがおさまると、芹花は切ないながらも納得する。
いくら悠生が義理堅くて優しいといっても、誤解してはいけないし、本当の恋人ではないことを忘れてはいけないのだ。

「楓、何でもかんでも口にしないの。自分の立場をわきまえて発言してっていつも言ってるでしょ? この間も自宅まで記者に追いかけられて大変だったんだから。つまらない写真を撮られたりして仕事に影響させないでよ」
 
楓の言葉を、マネージャーが厳しい口調で封じた。 
楓は彼女の言葉を気にすることなく「はーい」と言って聞き流すと、テーブルの上に置いていたノートをペラペラと広げた。

「それで、オビのコメントを考えてみたんだけど。どれがいい? 私の一押しはこれなの」
 
楓はそれまでのにこやか過ぎる様子から一変、きりりとした表情でノートの中の一文を指さした。
 
たちまちその場は「イラスト集のオビコメントをさっさと考えましょう」モードに変わってしまった。