こんなに全速力で廊下を走ったのなんか初めてだ。

先生にこの状況を見られたらきっと、間違いなく怒られる。

あぁもう、どうしてこんな目に遭ってるんだろうか、私は。






だけどね、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。


そんな罪悪感からのドキドキが、いつの間にかワクワクに変わってたなんて言ったら。

君は笑うのかな……?






控えめに、いつも廊下の端を誰の邪魔にもならないようひっそりと歩いていた。

楽しそうに笑う人たちがキラキラして見えた。

眩しさで目が眩みそうだったから。



私には無いもの。

それらを持ってる人たちからずっと目を背けてきたんだ。



何も教えてくれず、ただ私の手を引いて走るこの人が、そんな彼との偶然の出会いが、私の世界を変えるだなんて、この時の私は想像もしなかった……。