「ママー！」
「ふうと！ごめんね、ふうと！」
嬉しそうにお母さんの胸に飛び込んで行ったふうちゃん。
ふうちゃんのお母さんは強くふうちゃんを抱きしめると、目にはじんわりと涙を浮かべていた。
「良かったね、ふうちゃん」
「ふうとのこと見つけて下さって、ありがとうございます。あの、何てお礼を言ったら……」
「いいえ。私もふうちゃんと一緒にいられて楽しかったので」
ふうちゃんのお母さんは何度も何度も頭を下げてお礼を言ってくれた。
その度に胸が締め付けられて、苦しくなった。
「みゃーちゃんとイチが一緒にいてくれたから、ぼく泣かなかったんだよ」
「そう。偉かったね」
自慢げにふうちゃんが話すのを、優しい眼差しで見つめているお母さん。
ふうちゃんはお母さんのことが大好きで、お母さんもふうちゃんのことをとても大事に思っていることが分かる。
きっとこれが普通の親子の姿。
微笑ましいはずのシーンなのに、私は顔が歪みそうになるのを必死で堪えていた。
「行こっか」
「あー、うん。そうだね」
変な顔になっているところを誰にも見られたくなくて、下を向いて歩いた。
だから、イチくんがどんな表情で私を見ていたかなんて、私には分からなかった。
