あの安藤伊智?って、同じ名前の人が他にもいるのかな。

思い浮かべてみるけど、友達の少ない私には見当もつかないことだった。

「安藤伊智っていえば……」

苑実の声にはっとする。
そういえばさっきから表情も曇っていて、様子が少し変な気もしていた。

「苑実、イチくんのこと知ってるの?」

「知ってるもなにも……、安藤伊智っていえばろくな思い出がない。先月なんか男バスのヘルプだかなんだか知らないけど急に入ってきたかと思えば、あいつ目立つじゃん!うちの女子まで練習の手止めて応援行くじゃん!超迷惑なんだけど!」

「そ、そうだんたんだ……」

それって単なる八つ当たりなんじゃ……。

と、喉元まで出かかった言葉を購買で買ったレモンティーと一緒に飲み込んだ。

苑実のあまりの圧力に気圧されて、言えばもっとヒートアップするとも思ってしまった。


苑実は迷惑だと言ったけど、昨日サッカーをしていたイチくんやサッカー部の人たちのことを思い出すと、そうでもない気がしていた。

まぁ確かに、苑実のように練習の邪魔をされて迷惑に感じている人もいることは事実だから、一概にそうじゃないよとも言い切れないのだけれど。