「えっ?」

私の手からひょいと攫われていくデジカメ。

見せてって言われても、まだ人に見せられるような写真は一枚も取れていないのに。

中にはピントが合っていなかったり、手振れしてしまっている写真もあって、イチくんが見たら呆れられてしまうかもしれない。

先程のベンチに腰を下ろして、足を組みながら真剣にデジカメのメモリーに目を通しているイチくん。

私はまるで目の前でテストの採点でもされているような気分で、その様子を黙って見つめた。


木の枝の隙間から太陽の光が零れている。
その時ふわりと風が吹いて、イチくんの黒い髪を優しく揺らした。

あ、今のこの感じ、いいかも……。

無性にシャッターを切りたくなった。
でもデジカメが今イチくんが持っているし。

と、私はとっさに制服のポケットからスマホを取り出してカメラアプリを起動させた。

すかさず撮影ボタンをタップすると、スマホからカシャッと機械的な音がした。

スマホのカメラなんて、なんだか邪道な気もするけど……。
うん、上手く撮れた気がする……。