くいくいと後ろから制服を引っ張られて顔を向けると、未だ顔が緩みっぱなしの苑実が耳打ちしてくる。

「ね、ね。今のほんと?」

「うん……本当だよ」

言いながらちらりと目線だけを大蔵に向けてみると、耳が真っ赤になっていた。

そんなに照れるようなこと言ったかな?

「へー、あの大蔵でも可愛い彼女にしか見せない顔ってのがあるんだねえ」

「しししっ」と悪戯な笑顔を見せる苑実。

友達やバスケ部の人と私の前では、大蔵の見せる顔に違いがあるのだろうか。

「あー、なんか羨ましくなってきた!あたしも彼氏欲しい!」

「苑実ならすぐに出来るよ」

「そう思う?じゃあ今日の文化祭でかっこいい人見つけたら声掛けちゃおっかなー」

話しているうちに学校が見えてきた。

正門の上には文化祭の横断幕が飾られていて、いつもと違う学校の雰囲気にどきどきしながら潜り抜けた。

今日は朝からよく晴れていて、雲ひとつない青い空が広がっている。

高校で文化祭を経験するのは2度目だけれど、クラスでお店をやるのは初めてだ。

お客さん、たくさん来てくれるといいな。