「みあ、どうした……?」

しばらくうずくまっていると、声が聞こえた。

顔を上げると目の前には心配そうに眉を寄せた大蔵がいた。

「どっか痛いのか?」

大蔵は屈んで私と目線を同じにすると、優しい手付きで背中をさすってくれた。

「ううん、大丈夫だよ」

首を横に振りながら答えると、大蔵は「そうか」と言って短く息を吐いた。

そういえば、昔もこんな風にして背中をさすってくれたことがあったっけ。

近所の子から悪口を言われて、その子たちがいなくなった後に公園のトンネルの遊具の中でうずくまっていたのを大蔵が見つけてくれて。

たしかその時も、はじめに言った言葉が『どっか痛いのか?』だった。

「そうやって聞くの、昔と同じだね」

「昔?……ああ、そうだな。お前は決まって大丈夫としか言わないけどな」

大蔵は笑いながら言うけれど、どこか棘のある物言いに私は首を傾げる。

大蔵は何秒か私の顔を見つめた後、背中をさすってくれていた手を私の頭に移すと、そのままぽんと乗せた。

「何かあったら言えよ」

「……うん」

頷いたものの、その言葉を深く考えることはしなかった。

不器用な大蔵の言葉の奥にある優しさに、この時の私は気付くことが出来なかった。