夏休みが終わったからといって、夏の暑さが和らいだわけではなく。

終業式の時と同様に、体育館から出て来た生徒たちは蒸し焼き状態にされた身体を引きずるようにして廊下を歩いている。

唯一違うことがあるとすれば。

「ってゆーか、これから実力テストとか聞いてないんだけど!」

「先生ちゃんと言ってたよ」

「知ってる。知ってるけど、忘れてた……」

夏休みの課題が範囲の実力テストが、午前中に行われるのだ。

「ごめん、みあ。あたし先に教室戻って勉強してくる!」

一秒でも早く戻りたいのだろう。

言い終わらないうちに走り出した苑実。

集団の中を掻き分けて、その姿はあっという間に見えなくなってしまった。

一人で歩いていると、前の方から笑い声が聞こえて目を向ける。

「……っ」

見なければ良かった。

そこに見えたのは、イチくんと橋本さんが楽しそうに会話をしながら歩く後ろ姿。

花が咲いたような橋本さんの横顔がちらりと見えて、私はぱっと顔を俯かせた。