---
12月25日。
イブまでとは言えないけど、賑わっている。冬休みに入っているせいか人は普段より多くて、そのぶん賑わいは止まない。
私はというと最近のもやもやが一向に晴れず、バイトに行く準備をしながらボーッとしていた。
だって、考えれば考えるほどわからない。相楽くんのことばかり考えて、なんて表せばいいかわからない気持ちでいっぱいで。考えるより先にため息が零れる。
「姉ちゃん、バイト行かなくていいの?」
「いま行くよ?でもなんかだるくて、」
「ふーん。じゃあ休めばいいじゃん」
ボーッとしている私に声をかけてきた弟が、何事なくそう言った。
だるいよ、確かに。でも休むわけにもいかない。でも行きたくない。そう思うのになあ。
「ううん。相楽くんに会いたいから行く」
行きたくないのに。
私の口は勝手にそう言って、ちいさく芽生えていた想いを簡単に言葉にしていた。自分でも予想できなかったそれに、思わず頬が紅潮していく。
「え、だれそれ」
「……おしえません!」
昨日、帰りに返してもらった白いマフラー。
それを抱きしめて、私は家から飛び出した。
一瞬にして冷えた空気が心地良いと思えるくらい、頬が、胸が、体が熱い。言いきれない気持ちを言葉にしただけで。ビックリするほど気持ちいいものなんだって、冬の風が告げている気がした。



