篠田さんは、力説する私に眉を下げた。
それでも止まらない。だって篠田さんがなんでも聞いてくれる気がした。

それに…、

いつもかっこつけたがる私に、もう本音を我慢なんてできなかった。

自分の性格くらい自覚してる。私は悔しいんだ。なんでもできる相楽くんがうらやましくて、それなのにそんな相楽くんのことばかり優先させてしまう。


「私、相楽くんがうらやましい。だけど、相楽くんの近くにいたいってときどき思う。冷やかしなんかじゃなくて、ずっと真剣に」

「光川さん、」

「変ですよね、私」


私が言いたいことなんて全部ちぐはぐで。

自分でも何を言いたいかなんてわからない。でも、それでも、今すぐに胸につかえたものを言葉にしたいと思った。篠田さんが困っていることもわかっていた。


「ごめんなさい。戻ります」


らしくないなあ、私。もやもやしてたってなにもわかるはずなんてないのに。柄もなく考えすぎているせいで、全部全部見失いそうで。

私は篠田さんにそう告げて、ドアノブをひねる。すこし引くと外気が髪を揺らす。

やっぱり外は寒いな、なんて当たり前のことを思いながら、相楽くんの名前を呼んだ。彼は私のほうを振り返って、「みっちゃん」と口元を微笑ませる。

ただそれだけのことが、私をより一層悩ませた。