相楽くんの手が離れていく。なのに浮かべられた笑みは緩やかで、穏やかで、まっすぐだった。
ひと呼吸置いた彼は、すこしだけ目を伏せたあとに。
「…俺もおなじ気持ちだよ」
ささやかに、言葉を紡いだ。
「みっちゃん」
ああ、やっぱり悔しいな。
「これからもそばにいてほしい」
その言葉だけで。涙は止まるし、寒さなんてなくなるし、全部の音がパッて消えるの。それなのに笑顔の彼がうれしくて、言葉少なでも顔が火照て、また“好き”で満たされる。
相楽くん。
相楽くん。
相楽くん。
これって夢なの？
「相楽くん、」
「ふ、顔真っ赤」
相楽くんはそう言って口元を緩めるけれど。そんな彼の顔も赤く染まっていて、うれしそうに笑んでいた。
「夢みたい」
「夢じゃないでしょ？」
ゆっくり手を伸ばして、私の頬をきゅっと摘んだ相楽くんの手はやっぱり冷たい。やけにリアルな感触が、現実だって伝えてくる。
