街を飾る木々は色鮮やかに光を灯し、定番の曲が人々の会話を和ませて、少し暮れてきた辺りを賑やかに彩る。
世間はクリスマス一色に染められていて、恋人たちが寄り添いながら行き交っている。
ああ、うらやましいな。
幸せに溢れた人々をみて自然とため息を吐き出してしまうのは、今日はクリスマスだというのに私は寒空の下でバイトをしているから。
クリスマスには欠かせないケーキを売るというバイトに、なぜか私は急遽呼び出されてしまった。
どうしても!と頼まれるとさすがに無理ですとは言えなくて。渋りながら了承すれば、街はクリスマスで恋人たちはイチャイチャしてて、その挙句、ケーキを買っていくのは大抵私の知り合いだった。
しかも可愛い女の子ばっかり。
理由なんてひとつしかない。
ううん、きっと私じゃなくてもわかるくらい簡単な問題。
私は行き場のない視線をさりげなくさまよわせて、すこしだけぎゅっと自分の手を握りしめた。
「相楽くん(さがら)」
私の声に、彼は視線を落とす。
白い息を外気に馴染ませる彼がゆっくりと私のほうを見て、
「なに?みっちゃん」