ゆっくりと囁かれる声が、耳に届くたびに、涙が流れて止まって繰り返す。


「うまく言えないけどさ、みっちゃんは笑顔に似合うって篠田さんが言ってたんだよね」

「え、がお?」

「うん」


笑顔なんて意識したことなかった。


「俺、初めてみっちゃんと会ったとき、すごく驚いたの」

「なんで?」

「初めてだったから」


相楽くんは苦笑を浮かべて、泣き止んだ私の頬の涙をそっと拭ってくれた。


「みっちゃんが、初めてだったんだよ。俺を見たあとに笑顔で『よろしくね』って言ったの」


そんなの普通のことだよ、と言いそうになったけど口を噤んだ。前に聞いたことがあった。相楽くんが学校でどんな生活を過ごしているのかを。

女子にずっと追いかけ回されるから息をつく暇もないって、大抵の女子は顔目当てだって。普段なら言わないことを、その日は疲れた表情で言ってた。


「ねぇ、みっちゃん」

「っ、はい」


でも、いまは。
今までの相楽くんとは違っていた。ふわりと微笑む彼は、私の名前を呼ぶ。


「俺は、」