悔しいくらい、きみがすき。



それはそれで、やっぱり悔しいな。
自分で気づかないうちに彼に溺れていて、私ばっかり悩んでいて、篠田さんの言葉で恋心に気づいてしまうなんて。悔しくて、うれしくて、なんて難題なんだろう。


「篠田さん、」

「うん?」


なぜか機嫌良さげに笑んでいる篠田さんに、私もしっかりと笑顔を返す。


「いろいろと気づかせてくれて、ありがとうございます」

「え?」

「私、ずっと悔しくてもやもやしてたけど、ずっと簡単なことだったんですね」


バカバカしいって笑われるかな。だけど私なりに考えて悩んだものが、篠田さんがいう“好き”という感情だったとするなら…、私は。バカにされても否定だけはしたくない。


「私、相楽くんに伝えてきます!ありがとうございました!」

「光川さん」

「篠田さんありがとう!!」


胸につかえたもやもやが消化された気がした。篠田さんにありがとうと言うと、何だかいつもより素直に笑えた。なんだ、こんなに簡単なことだったんだ。

自分に素直になるってすごくすごく難しいのに、ひとつの言葉でスっと肩の力が抜けて、自分らしくいられる。昨日よりも景色が晴れて見える。今日はすこし曇り気味で、そんなことはないのにね。

篠田さんは楽しそうに笑ったあとに、「いってらっしゃい」と穏やかにそう言った。