窓から涼しい風が吹いてくる。

夕日の中にすっぽり入ったように教室が橙色に色づく。

さっきまでは少し騒がしかった廊下からももう足音すら聞こえない。

聞こえてくるのは、メイングラウンドからの金属バットでボールを打った音や部活に取り組む人達の声。


去年の夏頃までは私もバドミントン部のエースとして部活をしていた。

だけど、夏の終わり頃に行った定期検診で今までなかったはずの異常がみられた。

確かに忘れることは多いななんて思ったりしたことはあったけど、まさか自分の記憶があと2年しかもたないなんて思いもしなかった。

それからは何をするにも力が出なくて、急に悲しくなったり寂しくなったりと情緒が安定しなかった。

だけど半年くらいも経てば、気持ちは勝手に楽になってくれて、今を楽しもうと思えるようになった。

楽しいことをしても忘れちゃうなら思い出せばいい。
と日記を書くようになった。

家に帰ってからじゃ1日の半分くらいの記憶しか残っていない。
だから、帰りのHRが終わってみんなが部活に行くなり、帰るなりした後の誰もいない静かな教室で今日あったことを日記帳に書いている。

少しずつ少しずつ思い出しながら。

「よしっ書き終わった!」

今日はいつもより早く終わったから、前のページでも見返そう。