「王様…先ほどのお言葉、大変嬉しいものですが…王様の命に変えられるものなどありません」

後ろを歩く老婆が小さな声で言った。


「私も、風様と同じ考えでございます。明日、国境近くの村に行かれるのはおやめください」


老婆もか…


「…もう行くと決めた」

「王様…」

「自室にいる。しばらく人払いをせよ」


自室の扉の前までくると、警備兵が頭を下げ扉を開けた。


「王様、私は…」


老婆がまだ何か言いたそうにしていたが、聞こえないフリをして部屋の中に入った。



パタンー



静かに閉まった扉。





「…はぁ…」



やっと一人になれると、大きな溜め息が出てしまった。