「何を言われても、私は行く」
「王様っ」
風は下げていた頭を上げ、困った表情をした。
そんな風の目を見ながら、話を続ける。
「父様と兄様が殺された時、多くの犠牲者が出た。その時から私は、王族というのは風や他の護衛達の命よりも尊いものなのか…命を懸けて守ろうとするほど、王族は価値あるものなのか…ということを、ずっと考えていた」
「王様、それはー…」
「私の今の考えは、王族であれ護衛たちであれ、国民たちであれ…皆、大切な命なんだ。命を守る優先順位などない。守れる命は、守らなければならない。私はそう思っている」
「王様…」
「だから明日、北国の国境の村に改めて向かう。そこで私は、今起こっていることをこの目で見なければならない」
「しかし、王様…」
「以上だ。何かあったらすぐに報告せよ」
そう言うと、再び前を向いて歩き出す。
「自室に戻る。風は護衛隊の本部に行き、指揮をとれ」
背を向けたまま言うと風だけをその場に残し、自室に向かった。



