部屋の外に出ると、王室に向かって歩き出す。

後ろには風、その後ろには老婆、警備兵の数人が付いてくる。


「王様、先ほどの大臣の処分はどうなさいますか?」


老婆が歩きながら聞いてきた。

「…処分などしない」

「しかしっ…」

「あの大臣のおかげで、私の意見を皆に言えたのだ。私の意見に賛成できない者は、きっと次の会議には出てこないだろう。それでいい」

「王様…」


まだ何か言いたげな老婆だったが、口を閉じた。



「それよりも、風」

「はっ…王様」


歩きながら、すぐ後ろにいる風に声を掛けた。


「お前はここにいていいのか?」

「私は王様を守ることが、第一優先ですので…。ひとつ、よろしいですか?王様」

「なんだ?」


「明日、北国との国境へ行くのはおやめください」


風の言葉に、足が止まった。




「…何故だ?」



ゆっくりと振り返り、すぐ後ろにいる風を見上げた。



「危険過ぎるからです。王様自ら、行かれる場所でもございません。どうか、お考え直しください」


風はそう言いながら、頭を下げた。