「国土大臣が繋がっていたという証拠はあるのですか?」
大臣の一人が手を挙げ、そう発言した。
「現時点で証拠はありません。しかし、王様に北国との国境に向かうように仕向けたのは、国土大臣。あの日、王様は一人で国境の村へ向かわれようとした。そのことを知っていたのは、後ろにいる老婆と国土大臣のみ。そして今ここにいないのは、国土大臣。首謀者だと考えていいでしょう」
…すごい。
風の話を聞いて、改めて感心してしまう。
「しかし、老婆も知っていたということは、老婆にも疑いがかかるのでは?」
「!」
一人の大臣の発言に、ピクっと眉が動いた。
「それは…」
風が答えようとしていたのを、右手を挙げ止めた。
「…この件は、私への暗殺未遂だぞ?何故、老婆を疑う必要がある?」
老婆にも疑いがかかるのでは?と言った大臣に対し、静かに問いかけた。
「そこにいる老婆は殺ろうと思えば、いつでも私を殺せる。それが何よりも証拠だ。よって、老婆はこの度の件とは無関係だ」
発言した大臣を真っ直ぐと見て、そう言った。
「…失礼致しました」
大臣は小さな声で謝罪すると、俯いた。
そんな様子を見て、小さな溜め息が出てしまった。
"ありがとうございます"
「!」
背後から小さな声で、そう聞こえた。
「…」
振り返ることはできず、小さく頷いて答えた。



