「その顔、どうにかしなさい。本当に…楽しみにしていたお父様が見たら、悲しむわよ」
お妃様としてではなく、母様の顔でふっと笑いそう言った。
「1時間で支度を済ませなさい。頼んだわよ」
「はい。お妃様」
母様が老婆に指示を出すと、王室から出て行く。
一時間で支度?
楽しみにしていた父様が悲しむ?
母様が言った意味がわからず、一歩を踏み出したまま動けずにいるとー…
「王様…いえ、花蘭様」
老婆が目の前に膝まついた。
「無礼をお許しください」
「…え?」
無礼って?
「時間がありません!支度を!!」
「「はい!」」
老婆が大きな声でメイド達に指示を出すと、元気よく返事が返ってきた。
そして、呆然としてしまっている私を数人のメイドが囲み、今までにないぐらいの早さで支度の準備をし始める。
「ちょ…」
文句を言おうにも、入浴に化粧にネイルに…目が回るほどの早さで進んでいく。
メイド達にされるがまま、一時間が経った。



