「それでは、花蘭女王様。また、後で」
西国の王子はニヤリと笑いそう言うと、警備兵の後に付いて行った。
徐々に足音が聞こえなくなり、シーンと静まり返る部屋の中。
なぜ、西国の王子は突然来たのだ?
しかも、許可書なしで勝手に国境を越えてくるなど…
「王様」
険しい表情で俯き考え込んでいると、前に立つ老婆が振り返った。
「私の知る限りでは、西国という国は近隣国の中でも一番大きな国です。今の西国の王様は、先代の王様…花蘭様のお父様とは、友好的な関係だったと聞いております」
父様とー?
「友好的な関係だと言うなら何故、許可書なしで勝手に国境を越えて来ているのでしょう?不法入国と疑われたくなければ、正式な許可書を申請してくるはずです」
背を向けたまま話し、風はさっきまで西国の王子が居た場所をじっと見ている。
「それに今、北国と我が国は緊迫した状況が続いております。そんな時に、西国と東国を行き来していれば北国からの反感を買い、西国でさえも北国から敵視されてしまう。そこまでして、何をしに来られたのかー…」
風の言葉に老婆も黙り、再び部屋の中に静けさが戻った。



