「大変失礼だとは思いますが、どちら様でしょうか?勝手に城内に入って来られては、困ります」
風が不審者に向かって、そう言った。
「門の警備兵には伝えたんだけどね。西国の王子が来たって」
「!」
西国の…王子!?
「…入国の許可は、出していないと思いますが」
「国境の警備兵には、許可もらったぜ?西国の王子と言ったら、すぐに通してくれたよ」
なぜ、西国の人間が東国にー?
いや、その前に…西国との国境の警備兵も、北国との国境と同じことがー…
風の背中越しに、西国の王子と言う男をじっと見つめていると…
「…そこの護衛長、邪魔だな」
「!?」
風が…邪魔!?
さっきから、この男…風に対して失礼なことばかりー…
"王様、ここは怒りを抑えてください"
睨み付けるように、西国の王子を見ていると老婆がボソッと小さな声で言った。
"なぜ、西国の王子が東国に来たのかを、聞かなければなりません。とりあえず、応接室にお通し致しますので、お話はそれから…"
老婆の話す声はきっと、風にも聞こえていただろう。
「西国の王子様を、応接室にお通ししろ」
「はっ」
風が警備兵に向かって指示を出した。



