「おっ…王様!」


「王様!!」


護衛隊の本部まで行くと、外で剣術や武術の練習をしていた護衛兵たちが、慌てて膝まついた。


皆、どうしてここに王様がー?という思いで、困惑しているのがわかる。



「護衛長 風は?」

護衛兵数十人を前に、そう静かに聞くとー…






「…王様」



建物の中から、驚いた表情の風が出てきた。



「どうして、こんな場所にー…」

「風こそ。今日は休みだと聞いたのに、護衛隊の本部で仕事か?私の護衛を副長に任せて」


そう言うと、罰の悪そうな表情で風が頭を下げた。


「申し訳ありません」

「謝って欲しいわけではない。少し話がある。それで、来たまでだ。…少し、付き合え」


そう言うと風に背を向け、来た道を戻る。


「はっ」


風の返事が聞こえ、駆け寄って来る足音が近付いて来る。


「…王様、今日は誠に申し訳…」

「謝るな。今日は、私も休みだ」

風がいつもの位置に付き、謝ろうとしたのを止めた。

「え…休みとは…」

「老婆に言われたんだ。"今日1日、何も考えずにお過ごし下さい。国政のことや、北国のこと…一度頭をからっぽにすれば、道が見えてくるかもしれません"とな」


「王様も…」


「!」

小さな声で風はボソッと言ったつもりだが、その言葉はちゃんと聞こえた。